一番好きなのは片思い。
現実に、付き合うと、そう理想とは違うことがおこる。
だから片思いというのはいつまでも美しく、美化され、妄想たくましく、好きだ。
そして片思いさせてくれる相手はとてもありがたい。
リアルにその人は実在するが、実際の姿はよくわからず、しかしこちらの妄想を掻き立ててくれる。
これほど良い人はいない。
私の片思いは純粋に二人いて、一人は初恋の人。
いまでも連絡はとれるが、そのかすかな何年かに一度の会話だけで、その片思いは維持できる。
同窓会などは10年に1度くらい会ったとしても、会わない関係がいい。
リアル過ぎたり近づき過ぎたりしてはいけない。
脳内片思いが保たれる距離感がいい。
そして私は心のそこから中学生だった彼の姿と中学生だった自分のあのなんともいえない初恋のいじらしさを少し感じられることがうれしい。
脳がタイムスリップできるのだ。
42歳の今でも。
そして成長した彼の姿は男臭く、尊敬できる人間性なことに感謝さえしたい。
よい男に育ってくれて本当によかった。
たぶん結婚して子供もいるだろうけれど、そのへんの詳細は知らなくてもいい。
片思いなのだから。
もう一人、この人は私が匂いと見た目と雰囲気だけで一目惚れした相手だ。
誰かと付き合っても、彼のことは忘れず思い続けていた。
残念なことにメールなどもなくしてしまったので、連絡はとれないしまったく素性がわからない。
しかし彼の動画がいくつか残っている。
ダンスをやっていた彼のイキイキとした姿と音楽を聴くたびに、脳内トリップできる。
あの場所にいた雰囲気、無理を言ってデートしてもらったイチ場面、目で追いかけていた彼の姿。
電車で隣通しに向かい合って立っていた時の近い彼の服から香る香り。
手を繋いでもらったのかさえ、あれは私の妄想だったのか、事実だったのかわからないけれど、もし手を繋いでいたら嬉しいなと思う。
人生で片思いできる相手が多いほどいい。
付き合ってしまえば、それはリアルで妄想はストップしてしまうし、たいてい別れたあと思うのが、なんでこんな人と付き合ってたのだろうと思うことばかりだし、付き合っていた内容さえ忘れてしまっている。
セックスの内容なんてだれも覚えていない。
ああ、一人だけ、キスの雰囲気が良かった人がいたけれど、それはあの場の雰囲気が最高だったから。
けれど遊びは遊び、そこで終了の相手とは、妄想はストップして終わってしまう。
だから、片思いは最高の時間トリップできる本当に人間だからできる行為である。
そんな叶わない夢を見続けるなんて、人からみたらなんの役にもたたないけれど。
私にとっては重要で、脳の快楽物質を分泌させてるものだと思っている。
お金も場所も時間も選ばず、私の自由にトリップできる「片思い」という代物は、誰にも奪うことができない。
もしこれを旦那がおこなっていたとしても、許そう。
誰も傷つけない、隠し事は、人生のちょっとしたスパイスだから。